アラウ／ショパン:スケルツォ(全4曲)、幻想ポロネーズ

ショパン
①スケルツォ 第１番 ロ短調 作品20
②スケルツォ 第２番 変ロ短調 作品31
③スケルツォ 第３番 嬰ハ短調 作品39
④スケルツォ 第４番 ホ長調 作品54
⑤ポロネーズ 第７番 変イ長調 作品61《幻想ポロネーズ》

クラウディオ・アラウ(ピアノ)
録音：1984年(デジタル)

死後も高い評価を受け続けるアラウのショパンです。これはアラウ81歳の録音です。晩年のアラウの演奏は、決して急がす、味わい深く和声を響かせ、たっぶりと旋律を歌わせるものです。スケルツォ4曲はもちろんのこと、幻想ポロネーズは本当に幻想的で美しさの極みです。アラウ独特の音色はフィリップスの優秀録音が支えていると面もあると思います。このアルバムのアラウのピアノの音も、自然でとても美しいです。

クラウディオ・アラウは南米のチリに生まれながら、ドイツ・ピアニズムの正当な後継者として名を馳せた人物。レパートリーの中心はモーツァルトやベートーヴェンだが、若い時にはリストを好んで弾いていたし、70年代からはショパンの名演を残している。これもそのうちの１枚。まずスケルツォについて言うと、やはりテンポが鍵となる。普通よりわずかに遅いだけなのだが、間の取り方や音の伸ばし方が違うために、最近の演奏とはだいぶ違う印象を受ける。また、ひとつひとつの音に至るまで表現が非常に豊かなので、スケール感は圧倒的な大きさを誇る。特に第２番と第３番の冒頭、語りかけるような音の運びが見事。一方「幻想ポロネーズ」では、テンポは少し速め。とは言っても、全体が速いわけではなくて、ゆったりとしたところには時間をかけて、それ以外のところでは、ポロネーズらしい切れの良いテンポを用いる。ミスタッチはところどころにあるが、それを補うのに十分な魅力がある。

表面的な装飾にこだわらず、作品の実体を掴むという姿勢で貫かれた非常に美しいショパン。スケルツォも、カップリングの幻想ポロネーズも、どちらも絶品です。特に幻想ポロネーズの美しさが本当に幻想的で、聴き入ってしまいます。

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